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Qスイッチファイバーレーザーパラメーター設定の基本

Raycus RFL-P30QB(30W Q-Switched Pulse Fiber Laser)パラメーター設定の基本とコツ

Raycus RFL-P30QB は、パルス幅固定タイプの 30W クラス Qスイッチ・パルスファイバーレーザーです。
パルス幅は約 90〜110ns、周波数レンジは 20〜60kHz と比較的扱いやすく、金属マーキングや浅い彫刻、アルマイト剥離など、一般的な用途に広く対応できます。
このページでは、初心者でも迷わず使い始められるように、設定のコツ用途別の具体的なレシピ をまとめています。


1. RFL-P30QB の特徴

  • 平均出力:30W クラス
  • 波長:1064nm(近赤外)
  • パルス幅:約 90〜110ns(固定)
  • 周波数レンジ:20〜60kHz
  • 最大シングルパルスエネルギー:1mJ クラス
  • ビーム品質:M² < 1.5(きれいなスポットが得られやすい)
  • 空冷・メンテナンスフリー設計

MOPA タイプと異なり、パルス幅は可変ではありません。そのため、オペレーターが主に調整するのは 周波数・出力・速度・ハッチ になります。


2. パラメーターの“効き方”と触る順番

STEP 1:まずは「基準レシピ」をそのまま打つ

いきなり自分で数値を全部作るのではなく、まずは基準となる条件で 1 発打つところから始めます。

  • 例:SUS 黒化の基準
    周波数:30kHz / 出力:60% / 速度:200mm/s / ハッチ:0°+90° / ハッチ間隔:0.03mm
  • この「基準ショット」を起点に、どこをどれだけ変えたかを見ていくのがコツです。

STEP 2:最初に触るのは「速度(Speed)」

結果の変化が一番分かりやすいパラメーターが速度です。

  • 黒が薄い/彫りが浅い → 速度を遅くする
  • 焼け・にじみが強い → 速度を速くする

STEP 3:次に Power(出力)を ±5% ずつ調整

速度で大まかな濃さを合わせたら、次に出力で微調整します。

  • 濃さが物足りない → Power を +5〜10%
  • 濃いが広がる・汚い → Power を -5〜10%

STEP 4:周波数(kHz)は“性質を変えるスイッチ”

周波数は、黒寄りにするか白寄りにするかを決める、性質切り替えのつまみです。

  • 低周波(20〜30kHz):黒っぽい/深い/シャープ
  • 中周波(30〜45kHz):バランス型
  • 高周波(45〜60kHz):白っぽい/浅い/熱がなだらか

STEP 5:ハッチは 0°+90° を基本に

1 方向だけだとムラやスジが出やすいので、基本は 0° と 90° の 2 方向ハッチ を前提にします。
深彫りや均一性が重要な場合は、45° を加えて 3 方向にすることで安定性が上がります。

STEP 6:良い条件は「写真+数値」で必ず記録

一度うまくいった条件は、あとから再現できるように記録しておきます。

  • 材質(例:SUS304 2B、黒皮鉄、A5052 黒アルマイト 等)
  • 周波数/出力/速度/ハッチ角度/ハッチ間隔
  • 加工サイズ(文字高さ・ロゴサイズなど)
  • 仕上がりの写真

3. 用途別|Raycus RFL-P30QB 推奨パラメータレシピ

以下は「最初の 1 発目に使える」ことを目的にしたレシピです。
現場では、ここから ±10〜20% の範囲で現物に合わせて調整していくイメージでお使いください。


① SUS 黒化マーキング(ロゴ・番号)

狙い:深みのある黒。煤っぽくなりすぎず、輪郭がクッキリしたマーキング。

周波数 25〜35kHz
出力 60〜80%
速度 180〜280 mm/s
ハッチ 0°+90°
ハッチ間隔 0.02〜0.03 mm
メモ 黒が足りない場合は周波数を 20〜25kHz へ下げるか、速度を落とす方向で調整。

② SUS 白マーキング(印刷のような白)

狙い:黒くならず、白いコントラストの高いマーキング。

周波数 45〜60kHz
出力 30〜50%
速度 400〜800 mm/s
ハッチ 0°+90°
ハッチ間隔 0.03〜0.04 mm
メモ 白がグレーっぽい場合は周波数を 55〜60kHz に上げ、速度を少し下げて様子を見る。

③ 浅い彫刻(SUS / 鉄 / 真鍮の 0.02〜0.05mm 彫り)

狙い:軽い凹み+色変化で、視認性の高いロゴ彫刻。

周波数 25〜40kHz
出力 80〜100%
速度 150〜250 mm/s
ハッチ 0° → 90° → 45°(3方向)
ハッチ間隔 0.02 mm
メモ 深さが足りない場合は速度を下げるか、周波数を 25〜30kHz の低めに調整。

④ 黒アルマイト剥離(アルミ)

狙い:黒アルマイトをきれいに飛ばし、地金の明るさを出す。

周波数 35〜50kHz
出力 40〜60%
速度 600〜1000 mm/s
ハッチ 0°(必要に応じて 0°+90°)
ハッチ間隔 0.03 mm 前後
メモ 剥離不足の場合は速度を落とすか出力を上げる。白濁や境界の荒れが目立つ場合は周波数を高め(45〜60kHz)に調整。

⑤ 樹脂(PEEK / ナイロン等)の薄い焼き文字

狙い:焦げ過ぎず、文字が読める程度の色変化。

周波数 40〜60kHz
出力 10〜30%
速度 600〜1200 mm/s
ハッチ
ハッチ間隔 0.04 mm 前後
メモ 焦げや溶けが強い場合は速度を上げるか出力を下げる。薄すぎる場合は周波数をやや低め(40〜45kHz)にして Power を少し上げる。

⑥ 真鍮(濃い茶〜黒茶系マーキング)

狙い:完全な真っ黒というより、濃い茶〜黒茶色のマーキング。

周波数 25〜40kHz
出力 70〜90%
速度 200〜350 mm/s
ハッチ 0°+90°
メモ 色が薄い場合は周波数を 25〜30kHz に下げる。にじみや輪郭ダレが出る場合は出力を下げるか速度を上げる。

⑦ 精密薄彫り(細かい線・模様)

狙い:ごく浅い彫りで、細い線や模様をシャープに出したい場合。

周波数 35〜50kHz
出力 20〜40%
速度 600〜1000 mm/s
ハッチ
ハッチ間隔 0.01〜0.02 mm
メモ 線が太る場合はハッチ間隔を広げるか出力を下げる。薄すぎる場合は出力を上げるか速度を少し下げる。

4. まとめ:RFL-P30QB の調整ポイント

まずは「基準レシピ」をそのまま打つ
最初の調整は Speed、その次に Power
周波数は性質切り替え(黒=低周波、白=高周波)として使う
ハッチは 0°+90° を基本とし、必要に応じて 45° を追加
良い条件は写真+数値で必ず記録し、自社レシピ集を作る