YDFLP-E-30-M7-S-R(30W MOPA)パラメーター設定の基本とコツ
YDFLP-E-30-M7-S-R は、JPT M7シリーズの30W MOPAレーザーです。
パルス幅と周波数を広く可変できることが大きな特徴で、黒化・白マーキング・薄膜除去・精密マーキングなど、幅広い加工に対応できます。
本ページでは、30Wモデル向けに、初心者でも迷いにくいように設定の考え方と使い方をまとめています。
1. M7(MOPA)の特徴
- パルス幅を幅広く可変できる
- 周波数を広く調整できる
- 短いパルス幅では、黒化・薄膜除去・シャープな加工がしやすい
- 中程度のパルス幅では、彫刻や汎用マーキングに使いやすい
- 長いパルス幅では、白マーキングや熱処理寄りの表現がしやすい
2. レーザーパラメーターの基本
MOPAレーザーで主に使うパラメーターは、次の4つです。
- パルス幅(Pulse Width:ns)
- 周波数(Frequency:kHz)
- 出力(Power)
- スピード(Speed)
パルス幅(ns)
パルス幅は、レーザー1発あたりの性格を決める値です。
- 短いパルス幅:瞬間的に強く当たりやすく、黒化や薄膜除去、シャープな加工に向きます
- 長いパルス幅:熱が乗りやすく、白マーキングや熱処理寄りの表現に向きます
周波数(kHz)
周波数は、1秒間に何発レーザーを出すかを示す値です。
- 低い周波数:1発ごとの間隔が広く、シャープで深めになりやすい
- 高い周波数:発数が増え、平均的に熱が乗りやすく、白っぽい表現や浅い加工になりやすい
出力(Power)
出力は、レーザー全体の強さです。
加工が弱ければ上げ、焼けやにじみが強ければ下げます。
スピード(Speed)
スピードは、レーザーが素材の上をどれくらいの速さで動くかです。
- 遅い:より熱が入りやすい
- 速い:熱が入りにくく、浅めになりやすい
3. 30W M7の仕様
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| モデル | YDFLP-E-30-M7-S-R |
| 動作モード | Pulsed / CW |
| 平均出力 | 30.8W(公称30W) |
| 中心波長 | 1066nm(公称中心 1064nm) |
| 波長範囲 | 1055〜1075nm |
| スペクトル幅 | 12.0nm |
| 出力調整範囲 | 0〜100% |
| 繰返し周波数 | 1〜4000kHz |
| ビーム径 | 6.5mm(公称 6.0〜8.0mm) |
| 制御インターフェース | DB25 デジタル信号 |
4. カットオフ周波数(30W版の重要ポイント)
カットオフ周波数とは、そのパルス幅で安定してフル出力を出せる最低ラインです。
これより低い周波数では、レーザーは保護のため出力を下げます。
YDFLP-E-30-M7-S-R カットオフ周波数表
| パルス幅(ns) | カットオフ周波数(kHz) |
|---|---|
| 1 | CW |
| 2 | 1300 |
| 4 | 750 |
| 6 | 480 |
| 9 | 375 |
| 13 | 250 |
| 20 | 170 |
| 30 | 135 |
| 45 | 110 |
| 60 | 100 |
| 80 | 90 |
| 100 | 80 |
| 150 | 45 |
| 200 | 37 |
| 250 | 37 |
| 350 | 37 |
| 500 | 37 |
使い方のコツ
- カットオフぎりぎりより、少し上で使う方が安定しやすい
- 出力が思ったほど乗らないときは、周波数が低すぎないか確認する
- 黒化や深彫りを狙う場合でも、まずはカットオフ以上で条件を作る
5. パラメーターの触り方
STEP 1:まずは基準レシピで1回打つ
最初からすべて自分で決めず、まずは基準値でテストします。
基準を作ってから調整すると、何を変えたことで結果が変わったか分かりやすくなります。
STEP 2:最初に触るのはスピード
- 黒が薄い、浅い → スピードを下げる
- 焼ける、にじむ → スピードを上げる
STEP 3:次に出力を触る
- 全体的に弱い → 出力を少し上げる
- 焼けが強い → 出力を少し下げる
STEP 4:周波数は仕上げ調整
- 低め → シャープ、深い、黒寄り
- 高め → 白寄り、浅め、熱が広がりやすい
STEP 5:パルス幅は加工の性質を変えるときに触る
- 6〜20ns:黒化、薄膜除去、シャープな加工
- 20〜60ns:バランス型
- 80〜500ns:白マーキング、熱処理寄り
STEP 6:ハッチは0°+90°を基本にする
1方向だけだとムラが出やすいため、まずは2方向を基本にします。
深彫りでは、必要に応じて45°を追加します。
30W M7 MOPAレーザー レンズ別スタートレシピ早見表【110mm / 175mm】
同じ30W M7でも、110mmレンズと175mmレンズでは、スポット径とエネルギー密度が異なるため、推奨レシピは変わります。基本的には、175mmレンズは110mmレンズよりも出力を上げ、速度を落とし、ハッチをやや詰める方向で調整します。
レンズが変わっても、カットオフ周波数そのものは変わりません。
変わるのは、実際の当たり方、濃さ、深さ、加工効率です。
30W M7では、パルス幅ごとに下回ってはいけない周波数があります。まずはカットオフ以上で条件を作り、そのあと濃さ・深さ・色味を追い込みます。
1. レンズごとの傾向
| 項目 | 110mmレンズ | 175mmレンズ |
|---|---|---|
| スポット径 | 小さい | 大きい |
| エネルギー密度 | 高い | 低い |
| 濃さ | 出やすい | 出にくい |
| 深彫り | 得意 | やや不利 |
| 広範囲加工 | やや不利 | 得意 |
| 小さい文字・精細加工 | 得意 | やや不利 |
110mmレンズ向き
- 深彫り
- 黒化
- 小さい文字
- シャープなロゴ
- 細かい除去
175mmレンズ向き
- 大きいワーク
- 広範囲の薄膜除去
- 熱を少しマイルドにしたい時
- 大きめの白マーキング
- 広い面の均一加工
2. 30W M7 カットオフ周波数表
下記の値を下回ると、レーザーは保護のため出力が落ちます。まずはこの表を基準に設定してください。
| パルス幅(ns) | カットオフ周波数(kHz) |
|---|---|
| 1 | CW |
| 2 | 1300 |
| 4 | 750 |
| 6 | 480 |
| 9 | 375 |
| 13 | 250 |
| 20 | 170 |
| 30 | 135 |
| 45 | 110 |
| 60 | 100 |
| 80 | 90 |
| 100 | 80 |
| 150 | 45 |
| 200 | 37 |
| 250 | 37 |
| 350 | 37 |
| 500 | 37 |
3. SUS黒化マーキング
| 項目 | 110mmレンズ | 175mmレンズ |
|---|---|---|
| パルス幅 | 13ns | 13ns |
| 周波数 | 700〜1200kHz | 700〜1200kHz |
| 出力 | 70〜85% | 85〜100% |
| 速度 | 180〜300mm/s | 120〜220mm/s |
| ハッチ | 0°+90° | 0°+90° |
| ハッチ間隔 | 0.02〜0.03mm | 0.02mm |
| 回数 | 1〜2 | 1〜2 |
175mm:13ns / 900kHz / 95% / 150mm/s / 0.02mm / 2方向
黒が茶色いなら、少し周波数を下げるか速度を落とします。にじむなら、出力を少し下げるか速度を上げます。
4. SUS白マーキング
| 項目 | 110mmレンズ | 175mmレンズ |
|---|---|---|
| パルス幅 | 80〜100ns | 80〜100ns |
| 周波数 | 900〜2000kHz | 900〜2000kHz |
| 出力 | 35〜60% | 50〜70% |
| 速度 | 350〜800mm/s | 250〜550mm/s |
| ハッチ | 0°+90° | 0°+90° |
| ハッチ間隔 | 0.03〜0.04mm | 0.02〜0.03mm |
| 回数 | 1 | 1 |
175mm:80ns / 1200kHz / 60% / 320mm/s / 0.025mm
白が弱いなら、先に速度を落として見ます。黄ばむなら出力を下げます。
5. アルマイト剥離
| 項目 | 110mmレンズ | 175mmレンズ |
|---|---|---|
| パルス幅 | 6〜13ns | 6〜13ns |
| 周波数 | 1000〜2200kHz | 1000〜2200kHz |
| 出力 | 25〜45% | 35〜60% |
| 速度 | 700〜1400mm/s | 500〜900mm/s |
| ハッチ | 0° | 0° |
| ハッチ間隔 | 0.02〜0.03mm | 0.02mm |
| 回数 | 1 | 1 |
175mm:6ns / 1500kHz / 50% / 700mm/s / 0.02mm
地金まできれいに抜けないなら速度を落とすか出力を上げます。白濁するなら周波数を上げる方向で見ます。
6. 塗装剥離・薄膜除去
| 項目 | 110mmレンズ | 175mmレンズ |
|---|---|---|
| パルス幅 | 2〜6ns | 2〜6ns |
| 周波数 | 1300〜2500kHz | 1300〜2500kHz |
| 出力 | 15〜35% | 25〜45% |
| 速度 | 900〜1800mm/s | 700〜1200mm/s |
| ハッチ | 0° | 0° |
| ハッチ間隔 | 0.01〜0.02mm | 0.01〜0.015mm |
| 回数 | 1 | 1 |
175mm:4ns / 1600kHz / 35% / 850mm/s / 0.012mm
母材まで攻撃しすぎるなら先に出力を下げます。取り残しがあるなら、速度よりハッチを詰める方が均一になりやすいです。
7. SUS浅彫り
| 項目 | 110mmレンズ | 175mmレンズ |
|---|---|---|
| パルス幅 | 20ns | 20ns |
| 周波数 | 250〜600kHz | 250〜600kHz |
| 出力 | 90〜100% | 100% |
| 速度 | 100〜220mm/s | 70〜140mm/s |
| ハッチ | 0°+90° | 0°+90° |
| ハッチ間隔 | 0.02mm | 0.015〜0.02mm |
| 回数 | 2〜10 | 3〜12 |
175mm:20ns / 350kHz / 100% / 90mm/s / 0.015mm / 4回
深さが足りない時、110mmは速度で追いやすいです。175mmは先に回数を増やす方が安定しやすいです。
8. 深彫り
| 項目 | 110mmレンズ | 175mmレンズ |
|---|---|---|
| パルス幅 | 20〜30ns | 20〜30ns |
| 周波数 | 200〜400kHz | 200〜400kHz |
| 出力 | 100% | 100% |
| 速度 | 80〜160mm/s | 60〜100mm/s |
| ハッチ | 0°+90°、必要に応じて45°追加 | 0°+90°、必要に応じて45°追加 |
| ハッチ間隔 | 0.015〜0.02mm | 0.012〜0.018mm |
| 回数 | 5〜30 | 8〜40 |
175mm:20ns / 300kHz / 100% / 75mm/s / 0.015mm / 10回
深さ優先なら、基本は110mmレンズの方が有利です。
9. 真鍮の濃色マーキング
| 項目 | 110mmレンズ | 175mmレンズ |
|---|---|---|
| パルス幅 | 13〜20ns | 13〜20ns |
| 周波数 | 350〜900kHz | 350〜900kHz |
| 出力 | 60〜85% | 80〜100% |
| 速度 | 180〜350mm/s | 120〜220mm/s |
| ハッチ | 0°+90° | 0°+90° |
| ハッチ間隔 | 0.02〜0.03mm | 0.02mm |
| 回数 | 1〜2 | 1〜2 |
175mm:13ns / 600kHz / 90% / 150mm/s / 0.02mm
10. チタンカラー
| 項目 | 110mmレンズ | 175mmレンズ |
|---|---|---|
| パルス幅 | 80〜200ns | 80〜200ns |
| 周波数 | 200〜800kHz | 200〜800kHz |
| 出力 | 20〜45% | 30〜55% |
| 速度 | 300〜900mm/s | 180〜500mm/s |
| ハッチ | 0°+90° | 0°+90° |
| ハッチ間隔 | 0.03mm | 0.025〜0.03mm |
| 回数 | 1 | 1 |
175mm:100ns / 400kHz / 40% / 300mm/s / 0.025mm
色が飛ぶなら出力を下げます。色が薄いなら速度を下げるか、周波数を少し上げます。
11. 樹脂の薄いマーキング
| 項目 | 110mmレンズ | 175mmレンズ |
|---|---|---|
| パルス幅 | 60〜150ns | 60〜150ns |
| 周波数 | 150〜600kHz | 150〜600kHz |
| 出力 | 8〜18% | 12〜25% |
| 速度 | 600〜1400mm/s | 400〜900mm/s |
| ハッチ | 0° | 0° |
| ハッチ間隔 | 0.03〜0.05mm | 0.03〜0.04mm |
| 回数 | 1 | 1 |
175mm:100ns / 250kHz / 18% / 600mm/s / 0.035mm
焦げるなら、出力を下げるより速度を上げる方が効く場合があります。溶けやすい材料は175mmレンズの方が扱いやすいことがあります。
12. 迷った時の基準条件
| 用途 | 110mmレンズ | 175mmレンズ |
|---|---|---|
| 金属マーキング基準 | 13ns / 600kHz / 70% / 300mm/s / 0.03mm / 2方向 | 13ns / 600kHz / 90% / 180mm/s / 0.02mm / 2方向 |
| 金属彫刻基準 | 20ns / 300kHz / 100% / 180mm/s / 0.02mm / 2方向 | 20ns / 300kHz / 100% / 100mm/s / 0.015mm / 2方向 |
| 薄膜除去基準 | 6ns / 1200kHz / 30% / 1000mm/s / 0.02mm / 1方向 | 6ns / 1200kHz / 45% / 700mm/s / 0.02mm / 1方向 |
13. 運用のコツまとめ
まずはこのページの「基準条件」または各項目の「まず打つ条件」で1回テストし、速度 → 出力 → 周波数の順で動かすと迷いにくいです。
深さ優先なら110mm、広い面の均一性や少しマイルドな当たり方を狙うなら175mmが使いやすいです。
- 110mmレンズ: 深彫り、黒化、小さい文字、シャープなロゴ向き
- 175mmレンズ: 広範囲加工、白マーキング、大きいワーク向き
※本ページの数値はスタートレシピです。素材ロット、表面状態、焦点、治具固定、ハッチ方向、回数、空冷状態などで結果は変わります。実加工では必ずテストを行い、条件を微調整してください。
